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線虫による「がん検査」受けました〜‼人間ドックの検査結果と違うじゃん‼

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尿一滴で「がん」の判定が可能と言い張る、線虫を使ったがん検査を先日受けました(もちろん興味本位ですけどね)。ところがどっこい、疑い深い私ですから同時に人間ドックも受けたのですが、どうも線虫による検査か既存のがん検診かのどちらかが間違っているっぽい結果に陥ってしまいました。

尿一滴で精度86%でがんの判定が可能なのか?

以前より線虫を使ったがん検査を可能性はあったとしても、まだまだ実用化は時期尚早なんじゃないの?と疑問を呈してきた私です。

【文春砲】「尿一滴でわかる線虫がんを使ったがん検査」の問題点

【文春砲】「尿一滴でわかる線虫がんを使ったがん検査」の問題点

がんの予防に効果あるとすることをいくら実践してもかかる人はかかります。がんになっていないことの安心感と早期発見のためには健診・検査しかないわけですが、尿一滴で精度の高いがん検査が本当に可能なら多くの人が飛びつくのは必至ですし、医療する側も大助かりなわけですが、果たして本当にそんな検査は可能なのでしょうか?

がん細胞は常に発生しているけど、悪性の細胞が増殖をしつづけて臨床上「がん」と診断されない限りは生命を左右するわけではないことが大前提として話を進めます。また、がんを早期発見することによって生命の危機を回避できることが明確に証明されている「がん」は実はそれほど多くはありません。

人間の細胞は35兆個以上あると考えられていて毎日数千個のがん細胞が作り出されていると考えられており、臨床上のがんとして発見されるまでは通常は数十年必要なんです。

そもそも、一生のうちに「がん」と診断されるのは2人に1人の確率なので線虫が、「がんを見つけました〜!」と判断しても治療する必要があるがん細胞を見つけたのか否かについては線虫に詳しくお話を伺う必要がありますし・・・50%の確率で、「がんでした〜!」と言っておけば線虫くんが大きな判定ミスをしたとも言い切れませんよね(笑)。

この結果では、どこの臓器のがんなのか判らないじゃん!!

線虫によるがん検査の結果はこのような感じのメチャざっくりしたものなのです。

線虫がん検査の結果

がんのリスク判定は低いとの結果だったのですが、この報告書がベースだとしたら、がんのリスクが高かった場合にはどこの臓器にがんが発生しているのかは、線虫くんは全く見分けがつかない様子。

つまり、陽性・陰性を半々で検査結果として伝えれえば、結論的には大間違いにはならないことになるんじゃないの???

「がんのリスクが高いです!」との診断結果が出てしまった方が医療機関を受診したとしたら、医師はどのようにしてどの臓器にがんが生じているのかを診断するのかのご指導をN-NOSEの株式会社HIROTSUバイオサイエンスに頂きたいと存じます。

腫瘍マーカーでは異常値をマークしてしまった(泣)

線虫によるがん検査の結果を知る前に、定期的に受診している人間ドックで腫瘍マーカーによるがん検診を受けました。

その結果、肺がんの腫瘍マーカーであるCYFRA(正式名称「サイトケラチン19フラグメント」cytokeratin19fragment の頭文字からシフラと呼びます)が基準値越えしてしまいました。

腫瘍マーカー「シフラ」が異常値

シフラという腫瘍マーカーに関しての評価は肺がんのプロフェッショナル医師がどのように判断しているのかについて詳細な知識を私は持ち合わせていないけど、ある臨床検査会社のウェブサイトによれば、

シフラは、肺非小細胞癌、特に扁平上皮癌Ⅱ、Ⅲ期ではSCC抗原やCEAと比べ高い陽性率が得られ、 また、子宮頸癌や食道癌といった肺癌以外の扁平上皮癌のマーカーとしても有用である。

https://www.saturin.co.jp/biz/inspection/ins/insp_1868.html

とのことですから、私たち泌尿器科医が腫瘍マーカーとして使用するPSAほど特異的な腫瘍マーカーではないとしても、有用な腫瘍マーカーであることのようです。

シフラは肺がん以外にも子宮頸がんや食道がんの腫瘍マーカーにもなりうるのですが、私は人間ドック受診時に胃カメラにて食道がんは見つかっていませんし、男性なので子宮頸がんも無いですから、そうなると肺がんの疑いが強く浮上してきてしまったのです。

注意:腫瘍マーカーによってがんを発見することの意義については医師間でも議論があります。一般的に腫瘍マーカーはがんに対する治療効果や治療中・治療後のがんの転移を監視することが主目的として運用されています。一方で、前立腺がんのマーカーであるPSAに関しては前立腺以外の異常によって上昇することは無いため、PSAを使用した前立腺がん検診については話が複雑になっています。

「前立腺がん検診」有効、有効じゃない論争に幕?意外な結果が出ました❗

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日本泌尿器科学会は国民の健康増進に寄与するべく、前立腺がん検診を適切に普及・推進する立場ですが、厚生省はPSAによる前立腺がん検診の有効性について異を唱えています。さらにヨーロッパは賛成の立場なのにアメリカでは反対だったりもします。複雑そうに見えて意外とシンプルなこの構造について解説します。

自分の命運をかけた線虫VSがんの腫瘍マーカー!?

尿を検体とした線虫によるがん検診の結果は陰性、現在臨床上使用されている血液を使った腫瘍マーカーによるがん検診の結果は陽性(基準値外との表現が正しい使い方)。

もしも、私が肺がんであったら腫瘍マーカーの方が正確な判定ができ、線虫くんは誤診をしてしまったことのなります。

私の立ち位置は線虫くんに対して信頼度は懐疑的だとして、線虫くんの間違いを糾弾するためには、私が肺がんであることがマストとなっちゃうことになるんだよなあ、参ったなあ。

尿を使って気軽にがん検診ができれば良いけど、臓器の判別はできない「線虫によるがん検査」が、人間ドックの代わりにはなり得ないし、臨床的な価値は現時点では見出せません。

私のシフラは基準値外でしたが、その後CTによって肺に異常は認められませんでした。でも、私の体内で日々がん細胞は生まれては消えているのは医学上の常識です。

  • 腫瘍マーカーが異常値と判定されたのちに線虫によるがん検査を受けてリスクが低いとの結果が出ても、一安心する人は極々まれのはず。
  • 線虫によるがん検査で陽性でリスクが高いと判定されても、どこの臓器のがんなのかを調べるのは至難の業
  • 線虫によるがん検査が臨床上有用であるとは現時点で言い切っている臨床医は何を根拠としているのでしょう、甚だ疑問です。

    ちなみに同時期に「がん遺伝子検査」も別会社のキットを購入して検体(唾液)を提出しました(もちろん興味本位だよ)。その結果が出たらまたブログ記事として報告しますね、お楽しみに!!

    著者プロフィール

    桑満おさむ(医師)


    このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

    1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

    医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

    桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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