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サリンを分解して癌も治す強酸性でありながら強アルカリ性という「ハサル液」の正体。

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昨日から私のツイッターのタイムラインが「ハサル液」という聞きなれない言葉で埋め尽くされてしまいました。「ハサル液」という言葉を見て速攻で頭に浮かんだのがなぜか園芸用の肥料の「HB-101」(笑)。

知らない話題の場合はまずは一次ソースを確認することが大切です。ハサル液の一次ソースというか、言い出しっぺはこのウェブサイトでしょうね。

ハサル液とは

http://hasal.co.jp/products/hasal01.html

ハサル液を取り扱っている会社名自体が「ハサル」ですから間違い無いと判断して話を進めますね。

ハサル液の医学的な効果

私の守備範囲と思われる医学関連ではハサル液のウェブサイトの左のバナー「抗がん治療」および「最新型重粒子癌治療装置」が気になります。

そこでハサル液の「抗がん治療」をポチると・・・「詳細情報をご希望の方は、メールにてお問い合わせください。」となっちまいます。めげないで最新型重粒子癌治療装置をポチると・・・同じように「詳細情報をご希望の方は、メールにてお問い合わせください。」。とにかくメールが好きなハサル液を取り扱っている一次ソース株式会社ハサルなのです。

そもそも保護されていない通信と表示されるウェブサイト、強引にメールでハサル液に関して問い合わせしてみようと試みると見慣れない表示が出てきちゃいました。

怪しすぎる「ハサル液」の問い合わせフォーム

会社概要にある電話番号で問い合わせを試みましたがだーれも出ませんので、ハサル液に関する詳細はツイッターに頼るしかないようです。

ハサル液はがんを治す!!??

AKIなるアカウントの方はハサル液でがんが治ると主張しています。ほらねっ。

ハサル液でがんが治る
https://twitter.com/kurodoraneko15/status/1462617845599064064/photo/1

がん治療に役立つハサル液ですからハサル液の成分が当然気になりますよね。そこで先ほどのウェブサイトおよび関連ツイートを見てみると驚きの事実が!!まあ、このツイートの後半はトンデモさんの特徴である量の概念に乏しい点が見受けられます。

ハサル液は強酸性でありながら強アルカリ性!?

ハサル液なる名称は「High Acid Special Alkali Liquid」の頭文字をとってHASALと英語では表記するそうです。医学系論文を集めたPubBMedでハサル液を調べてみると強アルカリの水が何らかの病気の治療に役立つ可能性について触れている医学論文はあるようです。

探せば強酸性の液体が身体になんらかの作用を及ぼしたことを報じる医学論文もあるとは思います。だって温泉って強酸性レベルのものがあるもんね(ちなみに私は日本温泉気候物理医学会の正会員だよ)。

温泉に浸かって病気が軽快したとしても、温泉は浸かるものであり飲むものでは無いですよね。

ハサル液は「癌」が治っています。健康被害もありません。

との少々日本語的に変なツイート、ハサル液の正しい使用について詳細を知るためにはAKIさんにダイレクトメッセージを送るしか手段は残されていないようで困惑している私です。

手足口病にも効果を発揮するハサル液

ハサル液で癌が治るとの主張に関しての詳細については残念ながら第三者による検証は不可能(効果あるわけ無いけどね)。旬の話題に乗っかったハサル液ニセ医学情報を発信しているAKIさんですから、昨年から世界を席巻している感染症にもハサル液は効果があると主張しているのですが、昨年2020年は幸にして流行しなかった手足口病が本年2021年に流行の兆しがあることも見逃してはいません。

こんなツイートがあります。

鼻に噴霧して使用するハサル液

https://twitter.com/t54gHTbbj7tCUSy/status/1462070450637324291

とにかくメールをくれ、ダイレクトメッセージをくれ、患者さんに寄り添う姿勢が強いハサル液関係者ですね。

日本語に若干問題のある「ひかる」さんは「買っただけで使ったことがない」とツイートしていますので、ハサル液はどこかで販売されていることを知ることができただけで大収穫です。

ひょっとして「ハサル液」は「マジックウォーター」と同じ可能性が・・・。

メール問い合わせ、電凸、ダイレクトメッセージ以外でハサル液をゲットしようとネット上をふらふらいしていたら、株式会社ハサルの会長である直井徳行氏がこのような物体に推薦文を寄せています。

農学博士「直井 徳行」とハサル液の関係は「マジックウォーター」にある

https://www.bitsuhan.com/site/pages/feature1709index.html

直井徳行氏の解説はハサル液が強酸性でありながら強アルカリ性である謎を説明してくれています。

  • マジックウォーター(ハサル液と同じであると思われる)はph12±0,5の強アルカリ性である
  • 強アルカリ性のハサル液は人体に触れる(肌に触れるだから飲んじゃだめなんだろうね)と弱酸性になる
  • ハサル液(ここではマジックウォーターだけど)はスキンケアに効果が期待できる

ここまではそれなりに理解不能ではありません。しかし、外用することによってスキンケアに役立つ可能性があったとしても、がんの治療に役立ったり、謎の文章「ハサル液は『癌』が治っています」の検証は現時点では不可能です。

EM菌を彷彿させるハサル液の万能かげんにうんざり

EM菌という万能感を強調したトンデモ系ニセ医学を信じてやまない人々がいます。

上流域にお住まいの「EM菌撒き散らしオバサン」、医師としては健康被害が心配です。

上流域にお住まいの「EM菌撒き散らしオバサン」、医師としては健康被害が心配です。

EM菌とは有用微生物群(Effective Microorganismsの頭文字をとってEM)で構成された菌を主成分とする詳細不明の物体で、科学的かつ医学的検証ではエビデンスは確立していません。EM菌というワードに遭遇したら要注意です。すべてはある理論につながっているのです。それは波動理論です。

そもそも土壌改良(EM菌によって土壌が改善されたことを科学的に証明したまともな論文はゼロ)に使用されていたはずのEM菌を服用することによって病気が治ってしまうという意味不明の流れが出来上がっています。

https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/2657/

そして、前掲の手足口病をハサル液(この方はハサル「駅」とツイートしているけど)で予防しようとトライしているようですが、EM菌も同じように鼻から入れちゃう人が出ています。

混ぜるな危険❗EM菌で鼻うがい⁉危なっかしくてドキドキしちゃうぞ?

混ぜるな危険❗EM菌で鼻うがい⁉危なっかしくてドキドキしちゃうぞ?

そもそも鼻うがいの安全性には疑問があるのですが、なんとEM菌を使った水で鼻うがいをする人がいます。ちょうど水道水で鼻うがいしてアメーバーが脳に入り込み死亡したニュースがありましたので、鼻うがいとEM菌について改めて注意喚起しておきますね。

そして医師免許を持ちながらニセ医学であるEM菌を信じてしまう人さえ出てしまう悲しい流れが出来上がっています。

おしっこ飲みながらEM菌をばらまきホメオパシーしながら酵素風呂に浸かっちゃうお医者さん。その1

おしっこ飲みながらEM菌をばらまきホメオパシーしながら酵素風呂に浸かっちゃうお医者さん。その1

おしっこを飲むと健康にいいと言われても、本気にする人はほとんどいないはずです。ですが、なぜか信じちゃう人がいます。おしっこが飲めてしまう人というより、身体に良いと思ってしまう根拠はなんなのでしょうか?悲しいことに飲尿療法を薦める医師は存在します。そんな医師が他に薦める治療法ももれなくトンデモです。

現時点でハサル液を支持したり、実際の診療に際してハサル液を処方している医師は見当たらないのが不幸中の幸いです。

例外としてあのうつみんの愛称で親しまれている内海聡医師がネットショップで「うつみんのスーパー 酸の液/アルカリの液」なるものを販売しているのが気にはなりますけど、今回は「うつみんだもの、まあいいや、もういいや」という気分でスルーしますね。

地下鉄サリン事件の際もハサル液が大活躍したという話も出回っていますが、サリンで汚染されたサリンは水によって加水分解されますので普通の水を誰かが勝手に「ハサル液」と呼んだとしても、間違いではない点がハサル液はかなり巧妙な仕掛けがなされている疑惑が生じてきます。

今から30年以上前に自衛隊の特殊機関(一般には知られていません)が生物科学兵器に対抗するために開発した自然の水です。あらゆる菌、ウイルス、毒薬、化学物質を殺菌、不活性化、解毒、分解します。

https://twitter.com/AKI8604/status/1406983515070099457

陰謀論もお好きなようですね、ハサル液を推しまくっているこの方は。

これからも例のテスラ缶のようにハサル液の医学的な効果・効能を主張するようなひとさまを惑わせる悪質系トンデモさんが跋扈するようであれば黒猫ドラネコさん(@kurodoraneko15)の意志を引き継ぎます。

ハサル液の医学的検証

https://twitter.com/kurodoraneko15/status/1462808035705847812

昨年から本年にかけて私は対立や不毛な議論はできるだけ避ける姿勢を取るべきであり、論破云々の前に対話が必要であるとの方針に転換しているつもりです。

しかし、知的な努力を行わずしてトンデモな主張をする人々に対してはその発言の裏に存在する何らかの思惑があると考えられます。反知性的な発言に煽られてしまう人々も常識から判断して非合理的な思考に陥っていたとしても、彼ら彼女らは合理的なものと受けとめてしまうことが問題を複雑化させています。

先日、朝刊をポストから取り出すときに五十肩を発症してしまいました。キーボードを打っても強烈な痛みが生じるので非常に不自由ながらテスラ缶に次いでハサル液なる物体に関して簡単に述べてみました。五十肩がもう少し落ち着いたら、さらにハサル液に関して機会があれば述べさせていただきます。

ところでAKIさん、ハサル液で「五十肩も治っています」症例をご提示いただけると幸いに存じます(苦笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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